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竹林のゆとりブログ

山奥で生活し、日々の思いをつらつらと書くブログ。 IT、数学、アニメなど。

線形写像と行列の関係

大学数学の紹介第一弾!

行列は高校時代に勉強したことがあるからなんとなく知ってるけど、線形写像って何?というレベルを想定し、

線形写像がどういうものか理解することを目指して、進みましょう。 まずは線形写像の定義を紹介す。

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数学なので、定義はきちんとしておきます。ただ、体やベクトル空間って見ても何かわからないと思うので、ここでは特に気にせず、そんな風に呼ばれる''もの''があるとだけ思っていてください。 これだけ見ても、何を言っているのかすぐはわからないので、例を考えてみましょう。 f:id:fatal-t-h-f-flydream-bamboo:20160604175712p:plain

何か当たり前のことを難しくしてるような気がしますね。線形写像じゃない例を考えてみましょう。 f:id:fatal-t-h-f-flydream-bamboo:20160604175759p:plain

今の例でなんとなくわかってもらいたいのですが、 f(ax)=af(x) が成り立つのは、 f(x) が直線の時ぐらいしかありません。 言い換えると、ほとんどの写像は線形写像ではなく、直線のような特殊な場合にのみ線形写像になります。

今の話を厳密に書いてみます。 f:id:fatal-t-h-f-flydream-bamboo:20160604175839p:plain

証明してみます。 {
f(x)=ax
}と書ける場合に f が線形写像なのは上の例の3を任意の数字に変更して議論すればすぐできるので、省略します。 {
f: \mathbb{R} \to \mathbb{R}
}が線形写像なら {
f(x)=ax
}と書けることを示します。 まず、線形写像{
f(x)=ax
}と書けるとすると、 、こっちにある情報は { f(x) }ぐらいなので、あるxの時の { f(x) }で a が書けるだろうと予想します。 それがいくつかはすぐ、わかりますかね 。そう{ x=1}の時です。 {
f(x)=ax
}が成り立つならば、 { f(1)=a }です。

なので、 { f(x)=f(1)x  }と書けることを示します。 今 { x \in \mathbb{R}   }なので、 f が整形写像であるという性質を使うと、 { f(xy)=xf(y)  } となります。これにy=1を代入すれば { f(x)=f(1)x  }となります。

証明についていけたでしょうか。不安があるのなら、納得できるまで議論をおってみてください。

この定理から、 { \mathbb{R} \to  \mathbb{R}   }の場合、線形写像は直線と全く同じとなります。 つまり、線形写像とは、直線の高次元化となっているといえます。 だから(直)線(みたい)形(の)写像という名前が付いていると思ってください。

証明についても一つわかってほしいことがあります。証明の中でも使いましたが、{ f(1)  }さえわかれば、すぐに全ての値が計算できます。 線形性があると特定のある点での値がわかれば、それからすぐに他の点の値がわかります。このことはこんな特殊な場合だけではないので、注意しておいてください。

{ \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m  } への線形写像と行列の関係

ようやく、本題に近づきました。 {
f: \mathbb{R} \to \mathbb{R}
}が線形写像である= f が直線でした。 {
f: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m
}の場合はどうなるのか、そんな時に出てくるのが行列です。

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まず、記号の説明をします。 { \displaystyle
M_{nm}(\mathbb{R})
}とは n 行 m 列の行列全体のなす集合です。 { \mathbb{R}^n  }の元は大学一年の教科書だと太字で書かれますが、 数学的にはただの元なので、院生レベルの講義や論文では、 { x      } と書きます。なので、ここでも太字にはせず。 { x      } と書きます。

では、これを証明してみましょう。

{ f(x)=Mx   }が線形写像となることを示す。 定義から、 { a(Mx)=M(ax)    }{ (M+M')x=Mx+M'x   } を示せばよい。 これは各成分ごとに丁寧に計算するとできるので、省略する。 ただし、{ aM      }{ M      }の各成分に対して{ a      }を書けるということに注意する。どこか一列や、一つの成分に対してだけ{ a      }をかけるわけではない。

逆を考えましょう。{ e_i \in \mathbb{R}^n  }の第 i 成分:1,それ以外0)と書きます。すると、

j 列が { f(e_j)    }となる行列 {  M }を作ります。 { f(x)=Mx   }となることを示しましょう。 { \displaystyle x = \sum_{i=1}^{n}  } とかけるので、線形性から

{ \displaystyle f(x) = \sum_{i=1}^n a_i f(e_j)  }

となる。以上により、行列の積の定義から、 { f(x)=Mx   }となります。

細かい計算は省略したので、気になる人はきちん計算してみてください。

数学的な定理として、きれいに書いてみましょう

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証明はしませんが、行列の積はこの同型が自然に保たれるようになっています。 つまり、 { \mathrm{Hom}(\mathbb{R}^n,\mathbb{R}^m)    }{ \mathrm{Hom}(\mathbb{R}^m,\mathbb{R}^l) の   }写像を合成した時、合成した写像に対応した行列は行列の積となります。

ベクトル空間と体

ここからは抽象度の高い話を大雑把にします。証明もしません。 メインはベクトル空間や体についてです。

体とは足し算、引き算、掛け算、割り算が定義でき、足し算や掛け算がうまくふるまってくれるものです。 定義はしません。興味があれば調べてみください。 例であげると、実数全体、有理数全体は体です。 整数全体は割り算がすると整数でなくなるので、体ではありません。

体上のベクトル空間とは、足し算、引き算がうまくでき、体から自然に掛け算が定義できるものです。 これも例のみあげると、 { \mathbb{R}^2    } はベクトル空間です。{ a(b,c)=(ab,ac),(b,c)+(d,e)=(b+d,c+e)     } とすることで、ベクトル空間となります。(b,c),(d,e)を自然にかけても、 { \mathbb{R}^2    } の元を定義できません。なので、 { \mathbb{R}^2    } は体ではないことも追記します。

ベクトル空間の全ての元が特定の有限個の元の足し算によって書ける(言い方は丸めています)時、有限次元と定めます。 そうでない場合は無限次元と無限次元です。

無限次元の例は関数全体のなすベクトル空間などです。

ベクトル空間が有限次元の場合、次元が定義されます。 { \mathbb{R}^2    } なら2次元です。

全ての元を足し算で書ける元の組、その組の個数の最小値を次元とします。 有限なので、最小値は必ず存在します。また、次元と同じ個数の元の組で、すべての元を足し算で書ける場合、その組を基底と言います。

有限次元のベクトル空間には以下の特徴があります。

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ただし、自然な同型写像は存在しません。このため、ベクトル空間の性質を無理に Kn と思わない方がいいことが多いです。 その時に使いやすい形でものをみることがベストだと補足しておきます。

上の定理たちから、 n 次元ベクトル空間Vと m 次元ベクトル空間の線形写像全体は { \displaystyle
M_{nm}(\mathbb{R})
}と同型となります。 しかし、これも自然な同型がありません。正確にはベクトル空間の基底の取り方に依存します。

そのため、基底を一つFixさせた時に、線形写像を行列であらわすことができます。 その行列を表現行列と呼びます。

なので、表現行列が異なっていても、基底の取り方が異なっているだけであり、線形写像としては同じという状態が発生します。 これはあまりみやすい状態でもないので、数学の人間はなるべく行列にするのではなく、線形写像として理解しようとします。

また、線形写像の場合は無限次元といった行列で表現できない場合も含むので、線形写像のは理論に深みがあるのです。 有限次元の場合は行列と全く変わらず、なおかつ無限次元も表現できるのであれば、それに越したことはありません。 そのため、私たちは行列という具体的なものより、線形写像という情報量の増えた抽象的な概念を好みます。

数学以外の世界だと抽象的にすると情報量が落ちることが多いと思いますが、数学は抽象的にすることで情報量が増えます。 このことは数学以外の人は知っておいていい話かもしれません。

逆に行列を使ってきちんと計算する場合、基底をうまくとり、表現行列を簡単にしたいものです。 そのための方法の一つがジョルダン標準形です。 ジョルダン標準形では、基底をうまく取り換えることにより、代数閉体上のベクトル空間からベクトル空間への表示行列は三角行列にできるというものです。 このような行列をとる方が簡単なため、毎回ジョルダン標準形をとるべきだと思うかもしれません。しかし、ジョルダン標準形やその標準形を与える基底を求めること自体が計算が大変なことがあることも注意として残しておきます。

いかがでしょう。なんとなく線形写像や行列についてイメージがつかめたでしょうか? これぐらい簡単だってなっておくと、工学で使う数学自体は非常に簡単に思えると思います。

TeX作った原稿をリライトしてるので、もしかしたら今度、TeXをそのままブログにあげるかもしれません。