竹林のゆとりブログ

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ルベーグ積分入門

前回数学の記事をまとめていて、高校数学程度の知識で読めるものを書くのは無理だと悟ったので、 学部1,2年レベルの数学を知っている人向けの記事にします。

微積線形代数、集合と位相ぐらいは使えるよ。っていう前提で話します。

ルベーグ積分について紹介します。

これをもとに次の記事ではDeepLearningの基本になる関数の近似の証明をする予定です。

ある連続関数{f:\mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^n}は、活性化関数にシグモイド関数を使えば、 十分近似できることを証明します。

この記事では導入ということで、ルベーグ積分の意味論や基礎理論を説明していきます。

積分を計算すること

リーマン積分により、積分可能な関数に対して、積分が定義されました。 しかし、積分が定義されたからといって、実際に計算ができるわけではありません。 実質積分が可能な関数は、微分の逆として、計算できるものぐらいです。 そのため、積分を計算するためには、工夫をこらして、微分の逆として計算できるものに帰着させます。

ルベーグ積分はその帰着方法が非常に強いことが有名です。

その例を2つあげます。

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実際には条件がありますが、こうやって極限や微分積分の入れ替えが簡単にできる場合が多いことが特徴になります。

 関数空間としての強み

一つの関数の積分を計算するというミクロな点だけでなく、関数全体のなす空間の性質をみようと考えることがあります。

積分という操作は関数空間から関数空間への線形写像になります。 関数空間は無限次次元クトル空間なので、自然さを求めるために、位相が定義されています。 その中で、完備性が非常に重要となります。 完備とは、点列の極限が存在することです。 リーマン積分可能な関数全体のなすベクトル空間は完備ではありません。 つまり、リーマン積分可能関数達のなす列の極限は、リーマン積分可能とは限りません。

これは非常に都合の悪い性質です。

ルベーグ積分では、完備性を持つため、関数空間としての議論に強い。

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リーマン積分には一つ限界がありました。 それはリーマン積分可能な関数の極限が、リーマン可積分にならないこと。 これは位相的な議論(極限)がうまく定義できないということになります。

つまり、ある関数があって、その積分を求める時に極限を使ってうまく計算しようという方法が使えません。

リーマン積分の場合はどうするか。それは一様収束性を使います。 一様収束ならば、うまくいくことがわかっているので、ただし、一様収束な関数だけに制限するのは非常に不自然です。 一様収束がリーマン積分と本質的に関係のない性質であること、また、リーマン積分できる関数の一部を排除するという行為は 数学の考え方として違和感があります。

そのため、リーマン積分のこうした課題を解決する方法を感がまえす。

それがルベーグ積分となります。

具体的な定義や定理を紹介します。

測度

まずは測度を定義します。

{X}を集合とする。{\mathcal{B}}{X}の部分集合のなす集合とする。 {\mathcal{B}}が以下の性質を満たす時、{\sigma}加法族という。

  • {B \in \mathcal{B}}に対し、{X - B \in \mathcal{B}}
  • {B,C \in \mathcal{B}}に対し、{B \cap C,B \cup C \in \mathcal{B}}
  • {\phi \in \mathcal{B}}
  • {B_1,B_2,\cdots \in \mathcal{B}}に対し、{ \cup_{i=1}^{\infty}B_i \in \mathcal{B}}

無限大まで含むのが{\sigma}加法族の特徴です。 次に測度を定義します。

写像 \mu : \mathcal{B} \to [0 , \infty]で、以下を満たすものを{X}または{(X,\mathcal{B})}の測度という。

 \mu(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}B_n) = \sum_{n=1}^{\infty}\mu(B_n)

また、{(X,\mathcal{B},\mu)}を測度空間といい、{\mathcal{B}}の元を可測集合という。

測度の定義はこれだけです。これを単純だと思うのか、何を言っているのか全くわからないと思うか人によるとは思いますが、 数学における定義はたいていこんなものです。これがどんな意味を持つのか考えるために例をみます。 f:id:fatal-t-h-f-flydream-bamboo:20160626172008p:plain

集合の要素の数を数えるのでcounting measureと呼ばれます.

もう一つ例を紹介します。これは例というよりはボレル集合の紹介です。

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理論を一気に紹介して、最後に{\mathbb{R}}の場合のルベーグ積分を具体例としてゆっくり味わう予定なので、後回しにします。

可測関数

可測関数について定義します。 測度空間{X}に対し、{f}が可測関数とは \{ x \in X | f(x)  \lt a \} が任意の a \in \mathbb{R} に対し、 可測集合となること。

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積分関数

まず、積分を定義します。

{(X,\mathcal{B},\mu)}に対し、 {\lambda_f(t)=\mu(\{x \in X| f(x) >t \})}とします。積分

{\displaystyle \int f  d\mu:=\int \lambda_f(t) dt}

で定義します。右辺はリーマン積分です。値としては無限大も含みます。 リーマンが縦なのに、対し、ルベーグが横で切るというイメージが理解できたでしょうか。関数の高さに依存して値をきっています。

当然ですが、この積分は無限大となることもあります。無限大にならない時、この関数を可積分関数と言います。

単調収束定理

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面倒なので証明の概略だけ説明します。 まず、 i \lt j の時{f_i \ge f_j}となる場合に示します。これは 単調増加性から、{\lambda_fn \to f}となることが簡単に示せます。 これと、リーマン積分と足し算の差が非常に小さいことを利用して、示します。 これを用いることで、{\mathrm{liminf}}については積分と極限を入れ替えても不等式が成り立つことがいえます。 (Fatouの補題) この評価と{g}が可積分なことを用いて、不等式を2つ側、{f_n}についてと{g-f_n}について評価しあうことで、 証明ができます。

また、{F(t) = \int f(x,t)dx }とすると、{\frac{dF}{dt} =\int \frac{\partial f(x,t)}{\partial x}}が成り立ちます。

これは平均値の定理を使って、上のルベーグの収束定理で使う関数を作り、証明します。

ルベーグ積分

ルベーグ測度とルベーグ積分について考える。

ルベーグ測度は \mu ( ( a,b ) )=b-a となるように定められた測度です。 正確には、

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そして集合{A}ルベーグ可測とは任意の集合{E}に対し、  \mu (A)= \mu (A \cap E ) + \mu ( A  \cap E^C ) を満たすことと定義する。

この場合、 \mu ( ( a,b ) )=b-a が成り立つ。またボレル可測集合はすべてルベーグ可測となることが知られている。

ルベーグ積分はこれだけではちゃんと積分に見えないかもしれません。しかし、以下の定理が成り立ちます。

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関数近似などで誤差を評価して計算すれば、すぐできす。

ざっと理論を紹介しました。 自分で整理していて、わかってくればくるほど、これは自明だからいらないという気持ちになってきましたが、 初めて読む人からすれば省略しすぎだと思うかもしれません。

言いたいのはルベーグ積分も理論や極限操作に慣れてしまえば大して難しくないこと。 それに、触ってくると非常に優しく美しい理論だということです。

では、また今度!!!!